Q24 診断ミス/他の診療科目との相談を怠った
Q24 他の診療科目との相談を怠った(診断ミス)
私は3年前に左乳房に固いものを感じ,近くの産婦人科医院に行ったところ,その医師 は触診し,心配ないといいました。しかし最近、私は乳がんで、転移もあると診断されま した。産婦人科医に責任はないでしょうか。
あなたは女性特有の疾患だから産婦人科を受診されたのだと思いますが,乳がんの診断 は外科が専門です。近頃は外科から独立させて,乳腺専門外来をもっている病院も増えて きました。
しかし実際は,あなたのように産婦人科や違う科へ行ってしまう人も多いのです。そう した場合,医師の方で専門家でなければ,他科へ回さなければなりません。そもそも,乳 がんと良性の腫瘤の区別は難しく,どんなに熟練した医師であっても,触診だけで「乳が んではない」とは診断できません。
乳がんか否かの診断が専門医でなければできないというわけではありませんが,患者が 腫瘤の存在を訴えているのに触診のみで診断できるとの知見はなく,超音波検査,マンモ グラフィー撮影,さらには細胞診や組織診が必要な場合も生じます。そのような診断手順 を踏まずに,あるいは専門医に紹介せずに,「だいじょうぶ」と,患者を安心させてしまい, 転移するまでにがんを進行させた医師の責任は大きいと思います。
裁判例でも脳神経外科医についてですが,患者の症状や治療方針について,自己の知識 や専門範囲を超えるものと判断しときは,他科の医師に積極的に情報を提供し,これと協 力するなどして治療に当たるべきと判示されています。
本件は総合病院ではありませんから,その産婦人科医師はあなたを専門医のいる病院に 紹介すべきであったといえます。下級審判例ではほかに,左腕をガラス戸に突っ込み怪我 をした患者が外科で処置を受けたが、のちに腕に機能障害が残ったケースについて,外科 医に対してはある時点で整形外科を受診させるべきであったと判示している例,病室で転 倒して胸椎骨折した患者について,主治医の内科医は整形外科医に診療を委ねるべきであ ったと判示している例もあります。(*1)
*1 熊本地裁平成8年1月25日判決,福岡高裁平成13年8月30日判決,
名古屋地裁平成15年9月25日判決
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